何十年も設備とともに生き続ける
「銘板」の奥深き世界。

(資)サンコーグラフィカ
愛知県名古屋市守山区元郷2-1402
TEL:052-798-7411
http://www.gctv.ne.jp/~graphica/

日本の「ものづくり」を支える町工場には、そこにしか出来ない素晴らしい技術や、人間味あふれる開発秘話など、伝えたいストーリーが沢山あります。現場にあるそうした魅力をお伝えしていくのが当コラム「ものづくりの舞台裏」。
第2回にご登場いただくのは、銘板製造をはじめネームプレートやラベル印刷など幅広い小型の印刷物を手がけるサンコーグラフィカの副社長の渡邊さんと勤続50年のベテラン職人の加藤さん。銘板という一見ニッチな製品がどのように作られ、顧客から何が評価されているのか。その秘密を探るため、編集員の谷口が突撃取材を試みました。

国までもが頼る。
変幻自在のエッチング加工技術。

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編集員 谷口

銘板といっても様々ありますが、御社ではどういった銘板を手掛けているのでしょうか?

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渡邊さん

銘板に限って言えば、工業製品や建設機械を製造する大手企業様をはじめとしたモノづくり企業様がメインの顧客となっています。

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編集員 谷口

(ずらりと並ぶ銘板を見て)すごい!こんなに多くの有名企業の製品を手がけていらっしゃるんですね。

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渡邊さん

こうした企業様は製品情報などを記載した重要なパーツとして取り扱われるため、非常に高い精度と耐久性や耐候性を求められます。そのためこれらのメーカー様の銘板は「エッチング加工」という製造方法で作成しています。

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編集員 谷口

エッチング加工とは具体的にどのような加工方法なのですか?

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渡邊さん

エッチング加工とは、ステンレスの板を薬品によって部分的に腐食させる加工です。腐食させ彫りができた部分に塗料を重ね、焼き付けて印字部分を定着させます。材料に直接彫り込むので、経年劣化で塗料が落ちても彫った部分が残り続ける。銘板には製品の識別情報や取り扱いに関する重要な情報が描かれてありますから、何十年といった長期にわたって機能する品質が求められるんです。

銘板サンプル・サンコーグラフィカ

[写真:左]手がけている銘板のサンプル。[写真:右]エッチング加工で制作された銘板。薬品により腐食させた凹みに塗料がきれいに重ねられている。

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編集員 谷口

そうなんですよ!!私たちも工業機械のメンテナンスを行いますが、取り掛かる前に最初にチェックするのは銘板です。そこに製品に関する重要な情報が書かれているのですが、結構多くの機械で文字が消えたり、腐食したりして情報が読めなくなっているんです。そうなるとメンテナンスする上での手がかりがなくて本当に困るんですよ。
銘板の品質ってメーカーやそれを使うユーザーにとって本当に重要なものだと再認識しました。

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渡邊さん

おっしゃるとおりで、屋外などの厳しい環境での使用を前提とするメーカーさんなどでは、非常に厳しい品質チェックが行われています。
中には試作品を意図的に高い湿度に置かれた環境に数カ月間放置して、腐食の発生がないかを顕微鏡でチェックする取引先もあります。

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編集員 谷口

ええーっ、びっくりですね!そんなに厳しくチェックされるんですね。

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渡邊さん

実際にこの工場まで来られてチェックされるんですが、どういった加工をしているのか職人なみに事細かに確認されていて、驚いたこともあります。

ホンモノを求める
市場ニーズの変化。

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渡邊さん

実際にそうした特殊なオーダーは少なくはなく、最近ではキャンピングカーのカスタムをされる企業様のネームプレートはとても特徴的なオーダーでしたね。

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編集員 谷口

キャンピングカーですか!?確かにキャンピングカーも屋外の過酷な環境で使われるイメージですが、どのように大変だったのですか?

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渡邊さん

耐候性は当然として非常に重要視されたのが「審美性」でした。最近ではアウトドアがよりおしゃれなものとなってきており、このメーカーさんもそうしたエンドユーザーのニーズを先取した感性をもっており、自社のロゴ入りプレートに並々ならぬこだわりを持っておられました。

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編集員 谷口

銘板に対してこんなにもこだわりをもったお客様が多いとは知りませんでした。これまでの大量生産大量廃棄の時代から、少数で高品質な”ホンモノ”を求める市場ニーズに応えきれる技術力と姿勢がお客様から評価されているんですね。

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渡邊さん

もちろん、価格やスピードを求められたり、一見無理難題と思える相談も多いですが、最新のオンデマンド機器UVプリンターによる立体物へのデジタルプリントなど新しい手法も積極的に取り入れ、新旧の製法を融合させることで、品質を落とすことなく多様なニーズに応えられています。

黒光りする工具とともに、
作り手のプライドも
受け継がれる。

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編集員 谷口

設備といえば、年代物の古い機械が元気に稼働していたのですが、こうした機械の取り扱いや、熟練工の方の技術はどのように維持されているのですか?

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渡邊さん

毎回違う難しいオーダーに応えるということは、マニュアルだけでは顧客のニーズに対処しきれないということでもあります。いまも現役で職人として活躍していただいている先輩の加藤さんが言うのは「常に使う人の気持ちになって作る」ということ。
これまでの実績からお客様の期待も高いですから、それらに応える中で技術が必然的に身についていきます。
ただ、年期の入った機械も多いですからメンテナンスには気を使っています。決して効率がいいとは言えないですが、古い機械があるからこそ、小ロットで特殊な要望にも応えることができています。この前は50年選手の焼き付け機にトラブルがあったのですが、ニイミさんのバーナーメンテのおかげでまだまだ元気に活躍してくれそうです。

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編集員 谷口

そう言っていただけて本当に光栄です。サンコーグラフィカさんに訪問して驚いたのは、機械を本当に大事に、そしてきれいに維持されているということです。特に目についたのがこのこの工具なんですが、これはどれくらい前から使われてるんですか?

工具がきれいに使われているだけでなく、旧式設備や作業場が隅々まで綺麗に清掃されている。

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加藤さん

(ここで大ベテランの加藤さんが登場)私が入社する前からあったから、もう50年以上は使われてるんじゃないかな?

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編集員 谷口

え!そんなに前から!そんなに古い道具がこんなにきれいに使われるなんて見たことないです。見る人が見たら、この年季の入り方を見るだけで、どれだけ道具を大切にしているかがわかりますね。
それに改めて見ると、全ての古い機械に埃もいっさいかぶっておらず全部きれいなんです!ものを綺麗に使う職人は腕がいい、と言う話を聞きますが、御社もまさしくそういったことなんだと思います。

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加藤さん

先代は現場が好きな方でしたね。毎日のように現場に来ては、ものづくりの心得を教えてくれていました。

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渡邊さん

先代は昨年他界してしまいましたが、先代や加藤さんが教えてくださったものづくりを「楽しむ」空気は今でも息づいていますね。

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編集員 谷口

機械に関わる人間にとって、銘板はとっても重要なものであることに改めて気づけましたし、だからこそ高い品質が求められるんですね。
新旧の製法を融合させてニーズに応えきる対応力にも驚かされましたが、何より仕事を前向きに楽しもうとする企業文化こそ、御社が選ばれ続ける理由なんだと思いました。
これからも何十年と活躍し続ける銘板を世に送り出し続けて行ってほしいです。今日は貴重なお話をありがとうございました。

今回は銘板製造とエッチング技術に着目しましたが、シール、印刷、シルク印刷に加えて、UVプリンターによる立体物へのデジタルプリントにも精通されているそうです。大きな工場では難しい小ロット・短納期の依頼にもお応えしているそうです。

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