再生重油とは? コストとトレンドに敏感な工場が注目する代替燃料

はじめに

工場の燃料コスト削減やCO2削減目標の達成を図るために、多くの企業が燃料選びに頭を悩ませています。そんな中、いま再生重油が注目を集めています。再生重油の主な原料は使用済みエンジンオイルや工業用潤油です。重油類の代替燃料として、直火使用の工業炉などに利用され、石灰製造、アルミ精錬、クリーニング、鍛造など様々な業種で高い燃料費削減効果CO2排出削減効果が生まれています。

この記事では一般のC重油やA重油と比較しても多くの利点がある再生重油の特性や工場での活用におけるポイントから注意点まで、詳しく解説していきます。

再生重油の定義・製造プロセスとその原料

再生重油の概略は以下のようなものです。

項目 内容
定義 使用済み自動車用のエンジンオイルや潤滑油などの廃棄物をリサイクルして製造された燃料油
製造プロセス 廃油を機械的・物理的・化学的な方法で処理し、劣化生成物や混入異物を分離除去して再生する
特徴 安価、リサイクルにより天然資源(石油)の使用量を減らせるエコ
品質 JIS K 2170 で品質が規定されており、1種については低硫黄、低塩素、低水分使用になっている
注目点 2022年に行われた省エネ法の改正によって廃棄物からリサイクルされた燃料(廃棄物原燃料)に区分されることとなり「実質CO2排出量ゼロ」としてみなされるようになった。

再生重油は、使用済みエンジンオイルや工業用潤油の廃油を精製して再利用した燃料です。原料となる使用済み廃油は、ガソリンスタンドや自動車整備工場、さらには一般の工場から回収されます。

▼ 表 1-2 再生重油に適した油種と適さない油種(潤滑油協会資料)

再生に適した油種 エンジン油、油圧作動油、タービン油、スピンドル油、トランス油、コンプレッサー油、ギヤー油、フラッシングオイル、非塩素系金属加工油、熱媒体油
再生に不適な油種 塩素系・水系・難燃性のもの一金属加工油(切削油、プレス油、焼入油)、不凍液、クーラント、ブレーキ液、グリース、ワックス、難燃性作動油(水グリコール、リン酸エステル)、溶剤(シンナー、石油化学製品)、シリコン油、動植物油
汚染による不適な油種 全ての油種において水分、スラッジ、ゴミの多いもの

※トランス油については、PCBを含有しないものに限る。
※熱媒体油については、第一種指定化学物質を含有しないものに限る。

使用済み潤滑油はすべての油種が適しているわけではなく、塩素系や水系の潤滑油は原料として使用できません。

再生重油の主な特徴

特徴1. 燃焼性と発熱量

再生重油の燃焼性は、一般的なC重油よりも優れています。これは、潤滑油由来の燃料であるため、炭化水素組成が安定しており、特に芳香族炭化水素の割合が少ないためです。また、再生重油の発熱量は、B重油と同等であり、工場での効率的な利用が可能です。

特徴2. 経済性

再生重油は、使用済み潤滑油をリサイクルして製造されるため、採掘される原油を使用する重油に比べて安価であることが大きな特徴です。特に、エネルギーコストを削減したい工場にとって、再生重油は経済的に有効な選択肢となります。

特徴3. 環境への配慮

再生重油の硫黄分は、0.3〜0.5%程度であり、一般的なA重油やC重油と比べても低く、環境に優しい燃料といえます。また、ダイオキシン類の発生を抑えるために、塩素分の削減が進められており、環境負荷を大幅に軽減できる点が特徴です。

実質CO2排出量ゼロ!
法改正により再生重油ならCO2排出対象から除外

2022年に改正されたエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)により、廃棄物からリサイクルされた燃料(廃棄物原燃料)はエネルギー起源CO2に位置付けられ、実質CO2排出量ゼロとしてみなされるようになりました。CO2排出削減に関連する税金や規制に対する費用(炭素税や環境税など)も低減される可能性があり、総合的に運用コストの軽減が期待できます。

工場における再生重油の利用におけるメリット

メリット1. 燃料コストの削減

再生重油は一般的なA重油やC重油と比較して、価格が安価であり、特に大量に燃料を使用する工場にとっては、年間を通じて大幅なコスト削減が期待できます。再生重油の品質は、通常JIS規格に準拠しており信頼性も高いといえます。

メリット2. 持続可能な資源の活用

再生重油は、使用済み潤滑油という本来であれば廃棄される資源を再利用しており、持続可能な社会を目指す上で有効なエネルギー源です。資源の有効活用とともに廃棄物の削減にも貢献します。

メリット3. 硫黄分の低減

再生重油は通常の重油に比べ硫黄分が低く、排出ガス中の硫黄酸化物(SOx)の発生が抑制されます。これにより、環境規制の厳格化に対応しやすくなると同時に、設備への負担が軽減され、ボイラーや排気処理装置などの機器の寿命が延び、メンテナンスコストの削減にもつながります。さらに、環境意識の高い取引先やパートナーからの評価向上にも寄与するメリットがあります。

再生重油の利用におけるデメリット

再生重油は廃油を再処理して作られるため、原料となる廃油の種類や状態によって品質が異なることがあります。各販売業者ごとの品質のばらつき懸念点です。ここでは品質の差によっておこる課題をまとめます。

燃焼設備の調整が必要な場合がある…

再生重油は、燃焼時に適切な予熱や燃料供給量の調整が必要です。特にA重油用の設備で使用する場合、燃料の加熱や燃焼条件の最適化が求められるため、追加の設備管理が発生します。

そうした理由から再生重油の導入(販売業者の選定)には慎重な検討が必要です。以下の記事も参考にしてみてください。

まとめ&アドバイス

再生重油は、コスト削減や環境負荷の低減といった点で、工場経営者や設備担当者にとって非常に有用な選択肢です。適切に管理された再生重油は、一般の重油と比べても多くの利点があり、燃料コストの削減や環境保護に貢献します。一方で、水分や灰分のへの懸念や、設備の調整といったデメリットも考慮する必要があります。それらを理解し、効率的に活用することで、工場の燃料費削減の実現と、地球にも優しいエコな生産活動を実現できるでしょう。

ガロプロ
木村 洋平

所属は石油部門。工業用潤滑油のスペシャリストとして工場の困りごとに寄り添い、顧客から信頼を寄せられている。石油製品のことなら潤滑油に限らずご相談ください。

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