燃料消費量の「見える化」で
得られるメリットとその効果

はじめに

一定規模の工場が合理的で効率的な経営を進めるためには、「見える化」がますます重要になっています。特に、ガスを使用している工場では、その消費量をデータ化することは非常に大きなメリットがあります。本記事では、「見える化」の具体的なメリットと、導入によって期待できる効果について詳しく解説します。

見える化とは?

工場の見える化のためのソリューション

「見える化」とは、工場内のさまざまなデータを数字で見えるようにすることです。これにより、設備や機器ごとのガス使用量や電力などのデータを正確に把握できるようになります。そのデータをもとに改善することで、効率的な工場運営が可能になるといわれています。

また得られた情報を数値化し、それを集計する間隔を製品ごと、時間ごと、1日、1週間、1月でまとめたり、昼夜の変動、季節変動の有無などの観点から分析することによって、より多くの有用な知見が得られることでしょう。

見える化のメリット

メリット① データ収集の労力削減・効率化の向上

これまで、見える化の実現はもとより日々の運転記録などにおいて設備担当者や生産部門のスタッフの目視による集計や集約に莫大な時間とコストがかかっていました。そうした作業を自動化することができ、本来のデータ分析やデータ活用に力を受けられます。

  • 設備ごとの使用量がわかる。
  • 製品ごとに積算を集計することにより、製品による使用量の違いがわかる。
  • 各設備の使用状況を時系列でみることにより、使用量のピークや積算が把握できる。
  • 各設備ごとの時系列データを足すと全体の使用量のピークがわかります。電力などはこれを分散させ、ピークを低くした方が、電気料金の電力量の契約、すなわち基本料金の低減などに活用できます。

メリット② コスト削減

エネルギー使用量を設備ごとに正確な数値として見える化することで、無駄な燃料消費をしている設備を特定できます。例えば、ボイラーと乾燥炉のどちらが多くのガスを使用しているかといった設備ごとの燃料消費を正確に把握でき、コスト削減の方策を検討しやすくなります。
また、故障や性能低下など設備の健康状態を把握するのにも役立ち、中長期的な保全を通じてメンテナンスコストを低減し、経費削減に繋げることができます。

各設備ごとの使用量がわかれば、それぞれのコストダウンに向けた分析や検討を具体的に行うことができます。通常は一番使っている設備の使用量低減、すなわち「省エネ」が実現できれば、全体の省エネにつながる貢献度が高いので、優先して進めることを検討します。

また、各設備ごとのコスト削減にかかる修繕費用、改善費用の比較をすることにより、一番費用対効果の大きいものから手を付けていくことになるでしょう。

メリット③ リスクの予防・安定稼働の向上

異常を迅速に検知することで、経営上の機会損失リスクを回避し、安定的な工場の稼働に貢献できます。具体的には明らかに通常の使用量から逸脱したデータが確認できれば何らかの異常があると判断し、早めに手を打つことが可能になります。

人的な外観の目視や現場の日常点検では、見落とされてしまうものでも、数値を見える化することで、安定稼働やより信頼性の高い生産ラインの運営が可能です。

メリット④ 従業員の意識向上

データを従業員と共有することで、省エネ意識が自然と浸透します。無駄な稼働などを数値で根拠を示すことで、作業員の省エネへのモチベーションが向上し、その結果、コスト低減や生産効率も向上します。

中規模工場への適用事例

見える化をきっかけに大幅なコスト削減を実現したモデルケースを参考に解説します。

事例

燃料使用料金:
ガス代は180万円 15t前後使用
ガスを消費する機器:
焼成炉、ボイラー、前処理乾燥炉、乾燥炉
業務内容:
関連会社から半製品が届く。 温水や薬液で脱脂洗浄をした後、前処理乾燥炉で乾かす。 下地を吹いたのち、特殊な釉薬を塗布して乾燥する。 焼成炉で焼成して完成品とする。

問題・要望

電力、ガス、原材料すべての価格が高騰。コスト削減したい。年間2千万円を超えるガス代をコスト削減せよ!と社長から大号令。何から始めればいいかわからず困っていた。

ガス消費機器の詳細情報を調査し列挙
機器       定格ガス消費量   稼働時間   備考
ボイラー 140kw 8h メンテは業者 ONボタン押すだけ 更新後3年 蒸気は洗浄槽使用 蒸気配管保温破れ 漏れあり ここだけメーターあり
前処理乾燥炉 150000kcal/h 8h ON・OFF制御 熱風漏れ箇所あり バーナー相当古い メンテしたことなし
乾燥炉 175kw 8h ON・OFF制御 入口、出口エアカーテン故障 メンテしたことなし
焼成炉 800000kcal/h 16h 長時間稼働、温調計により制御 バーナー16本、製造の要 ガスはここだけのバルクから供給

【仮説】焼成炉が1番使われている。 2番目は乾燥炉かボイラー。焼成炉以外は、前処理と乾燥路に新たにメーターを設置して計測。瞬時に積算ができるメーターを設置。焼成炉は、9t/月使用、 ボイラー 5t/月、前処理2t/月、乾燥炉2t/月

アプローチ方法・考え方
  • 1. メーターを活用して「見える化」を行うことで、エネルギーの使用状況を明確に把握できます。
  • 2. コストダウンを図る際は、まず最もエネルギーを消費している部分から着手するのが効果的です。その際、省エネ対策にかかるコストや、製造工程への影響を慎重に考慮することが重要です。
  • 3. そのほかのエネルギーロスが発生している箇所の対策や、無駄な稼働を停止することが、簡単にコストダウンに結びつく場合が多いです。
実際のリスクとメリットを踏まえた検討の流れ

一番使っているのは間違いなく焼成炉だが、故障や熱風漏れなどはないようだし、製造の要なので温度制御などをいじるのはリスクが大きく慎重な検討が必要

●ボイラー自体は既存業者が行っているし、新しく故障の可能性は低い。ただし蒸気配管などは改善の余地あり。
●前処理炉の熱風漏れや乾燥炉のエアーカーテンの修繕は効果が見込める。
●2番目に使用量が多いボイラー周りの設備から改善を図っていくことを決定

改善の手順

①ボイラーの蒸気配管などの改善

ボイラーの蒸気配管などの改善

蒸気を使って脱脂洗浄槽の温度を70°Cにしている。洗浄液を入れている。

  • 【1】壊れているスチームトラップを交換 →3%改善
  • 【2】傷んでいる保温カバーを修繕 →0.5%改善
  • 【3】蒸気バルブの保温カバーを設置 →0.5%改善
  • 【4】3槽の水槽の壁面を保温材でカバー →8%改善
  • 【5】2槽の湯温を60°Cに変更 →1%改善
  • 【6】3槽の湯温を70°Cに変更 →2%改善

合計13%改善(一つづつ改善していくことで、個々の影響度が分かる)

②前処理炉の熱風漏れや乾燥炉のエアーカーテンの修繕

  • 熱風漏れ修理 35万円
  • エアカーテン修理 16万円
  • エアカーテンの方がコストが安いため、先行して修理→10%改善
  • 熱風漏れ修理→ 18%改善

見える化のための具体的なステップ

1. データ収集

大規模な管理システム導入から簡易的なアナログメーターの活用まで、特に、ガス流量計の設置とデータ化に関しては以下の情報を参照ください

2. データの分析

収集したデータを分析し、どの設備や機器がどれだけの燃料を使用しているかを明確にします。

3. 分析に基づき改修・対策の実施

取集したデータを分析することで燃料ロスが多く発生してる設備・機器の特定することが可能です。客観的なデータに基づいて優先順位を決め対処することで、確実な省エネや生産性向上が行えます。

導入・活用のポイント

「現場」「生産技術・設備課」「経営」の協力が重要

見える化の実現・導入には、現場や生産技術・設備課の管理者の協力が不可欠です。燃料コストの把握は経営の観点で求められることが多いですが、それを実行するためには、日々工場設備に向き合っている現場の方々の協力が必要です。データを中心にすることで経営者の方々と同じ目線での工場の改善体制ができていきます。

ポイント1. 「現場の役割」

現場のスタッフは、日々のオペレーションを実行しながら、データ収集とその正確性の確保を担っていますが、集計作業は負担となっているケースも多くみられます。見える化が実現されることで、手動での目視確認作業が減り、数値情報の取得方法を手書きの集計表ではなく、オンラインで数値を取得する方法に変えることによってスタッフはより生産性の高い業務に集中できるようになります。

ポイント2. 「生産技術部門の役割」

生産技術部門は、見える化のデータを活用して生産プロセスの最適化を図ることができます。個人に依存しないデータ分析を通じて、どの設備や機器が効率的に稼働しているかを評価し、不採算な設備や機器を特定して必要な判断を行えます。これにより、工場全体の生産性が向上します。また、新しい技術や改善策の導入にも見える化のデータが役立ちます。ただし、改善活動をより実のあるものにするには、分析によって得た知見を現場スタッフとよく検討して、現場の実情に合った対策が取れることが成功のポイントになってきます。

ポイント3. 「経営幹部・監督者への貢献」

データに基づいた意思決定を行うことで、工場全体の運営を最適化できます。データを中心に工場運営をすることで、従業員全体のコスト意識も向上します。一時的な効果だけでなく、継続的に工場の生産性を見える化できるため、効果を定期的に評価しながら、必要に応じてあらゆる改善策を戦略的に実施することができます。客観的なデータは設備更新における補助金の申請の際にもエビデンスとして活用もでき、そうした意味でのニーズも高まっています。

専門家からのアドバイス

見える化の導入により、中規模の工場が得られるメリットは多岐にわたります。効率化、コスト削減、安全性の向上、そして従業員の意識改革を通じて、より効率の良い工場運営が可能になります。ニイミ産業では「見える化」をはじめとした効率的な工場経営のソリューションを数多く提供しています。何から手を付けたらいいかわからないという方から、具体的な工場の改善施策に関する相談まで、丁寧に対応しています。

事例集・お役立ち情報・相談窓口

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